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プチオンリーのカードラリーでカードに書いてた小話です。HAPPY!HALLOWEEN!






「長太郎、なんだおまえ、その格好」
 部室の扉を開けた宍戸の目に飛び込んできたのは黒いロングケープを翻らせた鳳だった。
 赤い裏地の立襟越しに振り返った顔貌は、前髪をオールバックにゆるく撫でつけ、かたちのいい額をあらわにしている。ひとふさ落ちた銀髪がなんとなしに色っぽい。いわゆるヴァンパイアの扮装だ。
「宍戸さんこそなんですか、それ。すごい可愛いんですけど、あざとい」
 一方の宍戸の格好は、頭に猫耳、頸には首輪のような赤い皮のチョーカー、服装自体はいたってシンプルな黒いロンTに黒い革パンツなのだが、どういう仕組みか黒くて細い尻尾がするりと伸びている。
 鳳は誘われるように宍戸に近づき、ニコニコしながらその尻尾をツンと引いた。
「あざとくねーだろ。引っ張んなよ、取れんだろ」
「えー、敏感になってて感じちゃったりしないんですか」
「やだねえ、長太郎君。エロマンガの読み過ぎなんじゃね」
「エロマンガなんか読みませんし」
「嘘つけ」
「俺、妄想派なんで、ブツはいらないんです」
「うわ、キモ! 見ろ、鳥肌立ったじゃねえか」
「別に宍戸さんで妄想したりしてないですよ」
「……」
「ぶ、なんでそんなムッとした顔してんですか」
 かわいい、と続けた鳳の艶っぽい笑顔を宍戸が上目で睨む。猫耳の下、本物の耳朶が赤いのがまたそそる。
「ね、宍戸さん、俺、お菓子持ってないからイタズラしてもいい?」
「……ハロウィンの趣旨をはき違えてんじゃねえよ。筋も通ってねえだろ、それ」
 そんな宍戸の突き放した物言いなど形ばかりで満更じゃないのを知っているとばかり鳳の手が尻尾を辿ってきたけれど、魔王の装束に身を包んだ跡部が現れるまであと数秒なのだった。



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